曇りのち晴れ

　世間はゴールデンウィーク。
　みんなどこか遠くに行ってるんだろうな。
　店は暇で、掃除に熱が入る。
　BGMのボリュームを少し上げてもらい、音に合わせて体をゆする。
　一生懸命盛り上げなければ、すぐにうつむいてしまう。
　毎日星を探し、晴れるのを待っている。
　「こたえはじぶんのなかにあるんだから」
　アトリエを手に入れ、石川屋のメニューも新しくなる。
　ぼくも新品になろう。
　今日は晴れだ、きっといいことがあるぞ。

開始

    

引越しが完了した。
デスクを置き、おもちゃを運び、道具を並べる。
なるべく元どうりに、もっと使いやすくレイアウトする。
大きな窓に向かう形にデスクを置き、高い景色を眺めながら仕事できるようにする。
作りかけでとまっていた材料を引っ張り出し、仕上げにかかる。
木を削り、やすりをかけ、ワイヤーを入れ、はり合わせる。
あっ、おもりを入れ忘れた。
僕の小さな理想が形になっていく。
たった一人にでも伝えられたらいい。
隣ではつむがごしごし木を切っている。
楽しそうに仕事をしている。
僕はタバコに火をつけ、つむと外の景色を眺める。
やっと始まった。

航海の前の興奮

  アトリエに引っ越した。
　ウイング型の小さい部屋。
　ここで始まる、これから始める。
　新しい扉が開いた気がする。
　この半年の鬱屈が少しは晴れる。
　完全にもとに戻ることはできないが、前よりも成長した何かが見つけられたらそれでいい。
　僕は今、静かな熱を感じている。
　旅に出たんだ。

風が吹く

　くみがいい店を見つけた。
　アメリカンハウスを大改造して作ったカフェ。
　’Winds Blow'
　お母さんが料理をし、息子さんがバーテンをしている。
　昭島のお店なのだが、色々と福生とつながるところがあり、話が弾む。
　僕は思わずビールを何回もおかわりし、ジャックまでおかわりしてしまい、予定より酔っ払ってしまった。
　外にはばか広いデッキがあり、庭もとんでもない広さで、夏の夕方が楽しみになってくる。
　今度は昼飯を食べに行こう。

虹

　免許の切り替えに府中まで行ってきた。
　天気予報は雨、僕は皮の上下でバイクに乗った。
　帰り、福生に入ったところで、いよいよ空は重く垂れ下がり、大粒の水が落ちてくる。
　バイクを停めしばらく雨宿りをする。
　雨は降っているのだが、突然空が明るくなり日が差し始める。
　「ん？」
　太陽を背中にして空を仰ぐ。
　虹だ。
　待ちわびたものにやっと会えた気がする。
　ずっとこの瞬間を待っていた気がする。
　会えることを知っていた気がする。
　虹を見たのだ。